ヤシャゲンゴロウのご紹介

最終更新日:2021年11月11日 ページ番号:03755

ヤシャゲンゴロウのご紹介

福井県南越前町の「夜叉ヶ池」に生息する「ヤシャゲンゴロウ」は、国内希少野生動植物種に指定されている日本固有種です。平成18年に「ヤシャゲンゴロウを育てる会」が発足し、町内施設で飼育下繁殖事業に取り組んできましたが、平成28年に解散し、町内における事業継続が困難になりました。現在では、町外施設で飼育(生息域外保全)されており、町では、平成30年に逝去された同会の奥野宏会長監修のもと製作された説明パネルを活用し、ヤシャゲンゴロウ」が生息する「夜叉ヶ池」の紹介や、保護増殖事業に尽力した先人たちが遺した資料を、後世に分かりやすく伝わるよう、地元団体であるNPO法人今庄旅籠塾等と協力して編集し、多くの方々に理解してもらえるパネルや映像を製作しました。
それら資料は、国の登録有形文化財に指定されており、今庄宿の中核地である「昭和会館」に常時展示しています。

夜叉庄太夜叉庄太チャンネル映像作品はYouTubeでもご覧いただけます。

チャンネルイメージキャラクター「夜叉庄太」(命名:奥野宏)

奥野宏による夜叉ケ池・ヤシャゲンゴロウ資料展示室

この部屋は、夜叉ヶ池とヤシャゲンゴロウに関する資料を展示しています。夜叉ヶ池は昔から人々の深い信仰心と心に癒しを与える自然豊かな山です。この山の池にいるヤシャゲンゴロウは地球で唯一、夜叉ヶ池のみに生息する小さな昆虫です。1,099メートルという標高の高い山岳地にある夜叉ヶ池は、行くだけでも大変な場所であり、ヤシャゲンゴロウの研究もなかなか進みませんでした。しかし、1982(昭和57)年ごろから地元・今庄中学校に勤務していた奥野宏氏が、今庄中学校自然科学クラブの生徒と共に何度も夜叉ヶ池に登り、地道に探索し、そこにいる生き物たちを観察しながらヤシャゲンゴロウの生態観察の研究を深められました。2006(平成18)年、環境省による「ヤシャゲンゴロウ保護増殖事業」の要請をうけた奥野宏氏の精力的な研究により、それまで解明されなかったヤシャゲンゴロウの生態がわかり、現在のヤシャゲンゴロウの保護活動の礎となっています。
その間、奥野宏氏はヤシャゲンゴロウと夜叉ヶ池を未来に残すべく、貴重な研究成果と標本などの資料を遺されました。
この資料展示室では、奥野宏氏の遺志を引継ぎ、私たち南越前町の貴重な自然と保全・保護に取り組むため、奥野宏氏が遺された研究成果や標本などを中心に展示しています。

夜叉ケ池・ヤシャゲンゴロウ資料展示室夜叉ケ池・ヤシャゲンゴロウ資料展示室

夜叉ヶ池の自然 

夜叉ヶ池は、福井県南越前町の南部の高い標高(1,099メートル)にあり、岐阜県との県境に接しています。
夜叉ヶ池には、水が流れ込む川も、流れ出る谷もありません。雨水と周囲からの伏流水による流入水量と、蒸発や浸透によって失われる水量とのバランスが保たれている不思議な池です。
夜叉ヶ池の周囲や底面部は、“層状チャート” と呼ばれる石英質の硬い堆積岩(中生代中期ジュラ紀)から形成されています。付近を通る断層に沿って、数十万年前に発生した地滑りにより大きな谷や凹地ができ、崩壊した土砂によるせき止めにより池が形成されたと考えられています。夜叉ヶ池には、水が流れ込む水路、流れ出る水路はなく、周囲のブナ林の保水力も相まって、微妙なバランスの上で池の水が保たれています。
夜叉ヶ池には、ヤシャゲンゴロウのほかは、ミジンコのようなプランクトン、アカハライモリ、モリアオガエルなど、生息する動物の種類はわずかです。これは、水の中の養分が少なく、生きものはたくさん生息することはできないためと考えられます。
夜叉ヶ池の周囲は、ブナ林に囲まれています。池の北側は、一年を通じて強い風が吹くため、樹木は大きく成長することができなくなっています。春にはカタクリが、夏にはニッコウキスゲ、秋にはリンドウが咲くなど、季節ごとに豊かな自然の姿をみせてくれます。

夜叉ケ池の自然夜叉ケ池の自然

ヤシャゲンゴロウの生態

ヤシャゲンゴロウは、地球上でただ一か所、夜叉ヶ池(福井県南越前町)だけに生息するゲンゴロウの仲間です。
ヤシャゲンゴロウは、かつては本州中部地方以北に分布する “メススジゲンゴロウ” と同種とされていました。しかし、夜叉ヶ池の個体はメスの翅に溝がないなどの特徴から、1985(昭和60)年に佐藤正孝博士により別種として名付けられました。
ヤシャゲンゴロウは、奥深い山の上の夜叉ヶ池にひっそりと生息しています。そのため、長らく研究対象になることはなく “未知” の昆虫でした。
ヤシャゲンゴロウの近縁種であるメススジゲンゴロウは、北海道から本州中部地方の標高の高い池にすんでいます。ヤシャゲンゴロウがすむ夜叉ヶ池は、メススジゲンゴロウの生息地と離れた場所にあります。
長い間、他の地域と地理的に離れた場所に隔離されていたため、独自に進化し、別種に分化したと考えられています。
ヤシャゲンゴロウは、一生のほとんどを水中でくらします。ゲンゴロウの仲間は、ふつうは飛んで移動します。しかし、ヤシャゲンゴロウは、翅はあっても飛びません。
晴れた日は、岩などで甲羅干しをする姿もみられます。
ヤシャゲンゴロウの生態ヤシャゲンゴロウの生態

ヤシャゲンゴロウを守る

ヤシャゲンゴロウは、他のゲンゴロウの仲間のように飛ぶことがありません。そのため、夜叉ヶ池の水質が悪化したり、地球温暖化とともに水温が高くなるなど環境が変わってしまったら、逃げることもできず、絶滅してしまうことが心配です。
ヤシャゲンゴロウは唯一、夜叉ヶ池にしかいません。
もし、夜叉ヶ池の環境悪化が急速に進んで、ヤシャゲンゴロウが絶えると、ヤシャゲンゴロウは地球上から消えてしまうことになります。
それを防ぐため、環境省が実施している保護増殖事業に南越前町も協力し、2006(平成18)年から町内でヤシャゲンゴロウの人工繁殖が始まりました。
ヤシャゲンゴロウの生態は未知のことが多く、飼育方法も確立されていませんでした。しかし、奥野宏氏が会長を務めた「ヤシャゲンゴロウを育てる会」が中心となった長年の取組により、徐々に飼育方法が解明されました。そして、2014(平成26)年からは、福井県自然保護センター、越前松島水族館などが協力し、さらに2018(平成30)年からは福井県自然史博物館も加わり、飼育に取り組むようになりました。

ヤシャゲンゴロウを守るヤシャゲンゴロウを守る

お問い合わせ先

建設整備課

電話番号:0778-47-8003 ファックス:0778-47-3166
メール:kensetsu@town.minamiechizen.lg.jpメールフォームからもお問い合わせいただけます)

表示切替